メインテナンスとデータリカバリ
時々、幾らかのお掃除をする必要があるかもしれません。つまり、レポジトリをよりコンパクトにすること、インポートしたリポジトリをクリーンアップすること、あるいは失った作業をもとに戻すことです。このセクションではこれらのシナリオの幾つかをカバーします。
メインテナンス
Git は時々 ”auto gc
” と呼ばれるコマンドを自動的に実行します。大抵の場合、このコマンドは何もしません。もし沢山の緩いオブジェクト(パックファイルの中にないオブジェクト)があったり、あまりに多くのパックファイルがあると、Git は完全な(full-fledged)git gc
コマンドを開始します。gc
はガベージコレクト(garbage collect)を意味します。このコマンドは幾つものことを行います。まず、すべての緩いオブジェクトを集めてそれらをパックファイルの中に入れます。複数のパックファイルをひとつの大きなパックファイルに統合します。どのコミットからも到達が不可能なオブジェクトや数ヶ月の間何も更新がないオブジェクトを削除します。
次のように手動で auto gc
を実行することができます。
$ git gc --auto
繰り返しますが、これは通常は何も行いません。約 7,000個もの緩いオブジェクトがあるか、または50以上のパックファイルがないと、Gitは実際に gc コマンドを開始しません。これらのリミットは設定ファイルの gc.auto
と gc.autopacklimit
によってそれぞれ変更することができます。
他にも gc
が行うこととしては、あなたが持つ参照を1つのファイルにまとめて入れることが挙げられます。あなたのレポジトリには、次のようなブランチとタグが含まれているとしましょう。
$ find .git/refs -type f
.git/refs/heads/experiment
.git/refs/heads/master
.git/refs/tags/v1.0
.git/refs/tags/v1.1
git gc
を実行すると、refs
ディレクトリにはこれらのファイルはもはや存在しなくなります。効率性のために Git はそれらを、以下のような .git/packed-refs
という名前のファイルに移します。
$ cat .git/packed-refs
# pack-refs with: peeled
cac0cab538b970a37ea1e769cbbde608743bc96d refs/heads/experiment
ab1afef80fac8e34258ff41fc1b867c702daa24b refs/heads/master
cac0cab538b970a37ea1e769cbbde608743bc96d refs/tags/v1.0
9585191f37f7b0fb9444f35a9bf50de191beadc2 refs/tags/v1.1
^1a410efbd13591db07496601ebc7a059dd55cfe9
もし参照を更新すると、Git はこのファイルを編集せず、その代わりに refs/heads
に新しいファイルを書き込みます。与えられた参照に対する適切な SHA1ハッシュを得るために、Git は refs
ディレクトリ内でその参照をチェックし、それから予備(fallback)として packed-refs
ファイルをチェックします。ところがもし refs
ディレクトリ内で参照が見つけられない場合は、それはおそらく packed-refs
ファイル内にあります。
ファイルの最後の行に注意してください。それは ^
という文字で始まっています。これはタグを意味し、そのすぐ上にあるのはアノテートタグ(annotated tag)であり、その行はアノテートタグがポイントするコミットです。
データリカバリ
Git を使っていく過程のある時点で、誤ってコミットを失ってしまうことがあるかもしれません。これが起こるのは一般的には、作業後のブランチを force-delete
して、その後結局そのブランチが必要になったとき、あるいはブランチを hard-reset
したために、そこから何か必要とするコミットが破棄されるときです。これが起きたとしたら、あなたはどうやってコミットを元に戻しますか?
こちらの例では、あなたの test リポジトリ内の master ブランチを古いコミットに hard-reset して、それから失ったコミットを復元します。まず、ここであなたのレポジトリがどこにあるのか調べてみましょう。
$ git log --pretty=oneline
ab1afef80fac8e34258ff41fc1b867c702daa24b modified repo a bit
484a59275031909e19aadb7c92262719cfcdf19a added repo.rb
1a410efbd13591db07496601ebc7a059dd55cfe9 third commit
cac0cab538b970a37ea1e769cbbde608743bc96d second commit
fdf4fc3344e67ab068f836878b6c4951e3b15f3d first commit
ここで、master
ブランチを移動させて、中間のコミットに戻します。
$ git reset --hard 1a410efbd13591db07496601ebc7a059dd55cfe9
HEAD is now at 1a410ef third commit
$ git log --pretty=oneline
1a410efbd13591db07496601ebc7a059dd55cfe9 third commit
cac0cab538b970a37ea1e769cbbde608743bc96d second commit
fdf4fc3344e67ab068f836878b6c4951e3b15f3d first commit
あなたはトップにある二つのコミットを手際よく失いました。それらのコミットからはどのブランチからも到達され得ません。最後のコミットの SHA1ハッシュを見つけて、それにポイントするブランチを追加する必要があります。その最後のコミットの SHA1ハッシュを見つけるコツは、記憶しておくことではないですよね?
大抵の場合、最も手っ取り早いのは、git reflog
と呼ばれるツールを使う方法です。あなたが作業をしているとき、変更する度に Git は HEAD が何であるかを黙って記録します。ブランチをコミットまたは変更する度に reflog
は更新されます。reflog
はまた git update-ref
コマンドによっても更新されます。このチャプターの前の “Gitの参照” のセクションでカバーしましたが、これは、ref
ファイルに SHA1ハッシュ値を直に書くのではなくコマンドを使用する別の理由です。git reflog
を実行することで自分がどこにいたのかをいつでも知ることができます。
$ git reflog
1a410ef HEAD@{0}: 1a410efbd13591db07496601ebc7a059dd55cfe9: updating HEAD
ab1afef HEAD@{1}: ab1afef80fac8e34258ff41fc1b867c702daa24b: updating HEAD
ここでチェックアウトした2つのコミットを見つけることができますが、ここに多くの情報はありません。もっと有効な方法で同じ情報を見るためには、git log -g
を実行することができます。これは reflog に対する通常のログ出力を提供してくれます。
$ git log -g
commit 1a410efbd13591db07496601ebc7a059dd55cfe9
Reflog: HEAD@{0} (Scott Chacon <schacon@gmail.com>)
Reflog message: updating HEAD
Author: Scott Chacon <schacon@gmail.com>
Date: Fri May 22 18:22:37 2009 -0700
third commit
commit ab1afef80fac8e34258ff41fc1b867c702daa24b
Reflog: HEAD@{1} (Scott Chacon <schacon@gmail.com>)
Reflog message: updating HEAD
Author: Scott Chacon <schacon@gmail.com>
Date: Fri May 22 18:15:24 2009 -0700
modified repo a bit
一番下にあるコミットがあなたが失ったコミットのようです。そのコミットの新しいブランチを作成することでそれを復元することができます。例えば、そのコミット(ab1afef)から recover-branch
という名前でブランチを開始することができます。
$ git branch recover-branch ab1afef
$ git log --pretty=oneline recover-branch
ab1afef80fac8e34258ff41fc1b867c702daa24b modified repo a bit
484a59275031909e19aadb7c92262719cfcdf19a added repo.rb
1a410efbd13591db07496601ebc7a059dd55cfe9 third commit
cac0cab538b970a37ea1e769cbbde608743bc96d second commit
fdf4fc3344e67ab068f836878b6c4951e3b15f3d first commit
素晴らしい。master
ブランチがかつて存在した場所に、最初の二つのコミットを再び到達可能にして、あなたはいま recover-branch
という名前のブランチを持っています。次に、損失の原因は reflog の中にはないある理由によるものだったと想定しましょう。recover-branch
を取り除いて reflog を削除することによって、それをシミュレートすることができます。最初の二つのコミットは今いかなるものからも到達不能な状態です。
$ git branch –D recover-branch
$ rm -Rf .git/logs/
なぜなら reflog データは .git/logs/
ディレクトリに残っているため、あなたは効率的に reflog を持たない状態です。この時点でそのコミットをどうやって復元できるのでしょうか? ひとつの方法は git fsck
ユティリティーを使用することです。それはあなたのデータベースの完全性(integrity)をチェックします。もし --full
オプションを付けて実行すると、別のオブジェクトによってポイントされていないすべてのオブジェクトを表示します。
$ git fsck --full
dangling blob d670460b4b4aece5915caf5c68d12f560a9fe3e4
dangling commit ab1afef80fac8e34258ff41fc1b867c702daa24b
dangling tree aea790b9a58f6cf6f2804eeac9f0abbe9631e4c9
dangling blob 7108f7ecb345ee9d0084193f147cdad4d2998293
このケースでは、あなたは浮遊コミットの後に見失ったコミットを見つけることができます。その SHA1ハッシュにポイントするブランチを加えることによって、同様にそれを復元することができます。
オブジェクトの除去
Git には素晴らしいものたくさんあります。しかし問題が生じる可能性がある機能がひとつあります。git clone
がすべてのファイルのすべてのバージョンを含んだプロジェクトの履歴全体をダウンロードしてしまうということです。すべてがソースコードならこれは申し分のないことです。なぜなら Git はそのデータを効率良く圧縮することに高度に最適化されているからです。しかし、もし誰かがある時点であなたのプロジェクトの履歴に1つ非常に大きなファイルを加えると、すべてのクローンは以後ずっと、その大きなファイルのダウンロードを強いられることになります。たとえ、まさに次のコミットでそれをプロジェクトから取り除かれたとしても。なぜなら常にそこに存在して、履歴から到達可能だからです。
Subversion または Perforce のレポジトリを Git に変換するときに、これは大きな問題になり得ます。なぜならそれらのシステム内のすべての履歴をダウンロードしてないため、この追加のタイプはほとんど結果を生じません。もし別のシステムからインポートを行った場合、あるいはあなたのレポジトリがあるべき状態よりもずっと大きくなっている場合、大きなオブジェクトを見つけて取り除く方法があります。
注意: このテクニックはあなたのコミット履歴を壊すことになります。大きなファイルへの参照を取り除くために修正が必要な一番前のツリーからすべての下流のコミットオブジェクトに再書き込みをします。もしインポートした後そのコミット上での作業を誰かが開始する前にすぐにこれを行った場合は問題ないです。その他の場合は、あなたの新しいコミット上に作業をリベースしなければならないことをすべての関係者(contributors)に知らせる必要があります。
実演するために、あなたの test
リポジトリに大きなファイルを追加して、次のコミットでそれを取り除き、それを見つけて、そしてレポジトリからそれを永久に取り除きます。まず、あなたの履歴に大きなオブジェクトを追加します。
$ curl http://kernel.org/pub/software/scm/git/git-1.6.3.1.tar.bz2 > git.tbz2
$ git add git.tbz2
$ git commit -am 'added git tarball'
[master 6df7640] added git tarball
1 files changed, 0 insertions(+), 0 deletions(-)
create mode 100644 git.tbz2
おっと、誤ってプロジェクトに非常に大きなターボールを追加してしまいました。取り除いたほうがいいでしょう。
$ git rm git.tbz2
rm 'git.tbz2'
$ git commit -m 'oops - removed large tarball'
[master da3f30d] oops - removed large tarball
1 files changed, 0 insertions(+), 0 deletions(-)
delete mode 100644 git.tbz2
ここで、データベースに対して gc
を実行して、どれくらい多くのスペースを使用しているのかを見てみます。
$ git gc
Counting objects: 21, done.
Delta compression using 2 threads.
Compressing objects: 100% (16/16), done.
Writing objects: 100% (21/21), done.
Total 21 (delta 3), reused 15 (delta 1)
count-objects
コマンドを実行してどれくらい多くのスペースを使用しているのかをすぐに見ることができます。
$ git count-objects -v
count: 4
size: 16
in-pack: 21
packs: 1
size-pack: 2016
prune-packable: 0
garbage: 0
size-pack
エントリにはパックファイルのサイズがキロバイトで記されていて、2MB使用していることがわかります。最後のコミットの前は、2KB近くを使用していました。明らかに前のコミットからファイルが取り除かれましたが、そのファイルは履歴からは取り除かれませんでした。このレポジトリを誰かがクローンする都度、彼らはこの小さなプロジェクトを取得するだけに 2MBすべてをクローンする必要があるでしょう。なぜならあなたは誤って大きなファイルを追加してしまったからです。それを取り除きましょう。
最初にあなたはそれを見つけなければなりません。このケースでは、あなたはそれが何のファイルかを既に知っています。しかし、もし知らなかったとします。その場合どうやってあなたは多くのスペースを占めているファイルを見分けるのでしょうか? もし git gc
を実行したとき、すべてのプロジェクトはパックファイルのなかにあります。大きなオブジェクトは別の配管コマンドを実行することで見分けることができます。それは git verify-pack
と呼ばれ、ファイルサイズを意味する三つ目の出力フィールドに対して並び替えを行います。それを tail
コマンドと通してパイプすることもできます。なぜなら最後の幾つかの大きなファイルのみが関心の対象となるからです。
$ git verify-pack -v .git/objects/pack/pack-3f8c0...bb.idx | sort -k 3 -n | tail -3
e3f094f522629ae358806b17daf78246c27c007b blob 1486 734 4667
05408d195263d853f09dca71d55116663690c27c blob 12908 3478 1189
7a9eb2fba2b1811321254ac360970fc169ba2330 blob 2056716 2056872 5401
大きなオブジェクトは一番下の 2MBのものです。それが何のファイルなのかを知るには7章で少し使用した rev-list
コマンドを使用します。--objects
を rev-list
に渡すと、すべてのコミットの SHA1ハッシュとブロブの SHA1ハッシュをそれらに関連するファイルパスと一緒にリストします。ブロブの名前を見つけるためにこれを使うことができます。
$ git rev-list --objects --all | grep 7a9eb2fb
7a9eb2fba2b1811321254ac360970fc169ba2330 git.tbz2
ここで、あなたは過去のすべてのツリーからこのファイルを取り除く必要があります。このファイルを変更したのは何のコミットなのか知ることは簡単です。
$ git log --pretty=oneline -- git.tbz2
da3f30d019005479c99eb4c3406225613985a1db oops - removed large tarball
6df764092f3e7c8f5f94cbe08ee5cf42e92a0289 added git tarball
Git レポジトリから完全にこのファイルを取り除くためには、6df76
から下流のすべてのコミットを書き直さなければなりません。そのためには、6章で使用した filter-branch
を使用します。
$ git filter-branch --index-filter \
'git rm --cached --ignore-unmatch git.tbz2' -- 6df7640^..
Rewrite 6df764092f3e7c8f5f94cbe08ee5cf42e92a0289 (1/2)rm 'git.tbz2'
Rewrite da3f30d019005479c99eb4c3406225613985a1db (2/2)
Ref 'refs/heads/master' was rewritten
--index-filter
オプションは、ディスク上のチェックアウトされたファイルを変更するコマンドを渡すのではなく、ステージングエリアまたはインデックスを毎度変更することを除けば、6章で使用した --tree-filter
オプションに似ています。特定のファイルに対して rm file
を実行するように取り除くよりもむしろ、git rm --cached
を実行して取り除かなければなりません。つまりディスクではなくインデックスからそれを取り除くのです。このようにする理由はスピードです。Git はあなたの除去作業の前にディスク上の各リビジョンをチェックアウトする必要がないので、プロセスをもっともっと速くすることができます。同様のタスクを --tree-filter
を使用することで達成することができます。git rm
に渡す --ignore-unmatch
オプションは取り除こうとするパターンがそこにない場合にエラーを出力しないようにします。最後に、filter-branch
に 6df7640
のコミットから後の履歴のみを再書き込みするように伝えます。なぜならこれが問題が生じた場所であることをあなたは知っているからです。さもなければ、最初から開始することになり不必要に長くかかるでしょう。
履歴にはもはやそのファイルへの参照が含まれなくなります。しかしあなたの reflog と .git/refs/original
の下で filter-branch
を行ったときに Git が追加した新しいセットの refs には、参照はまだ含まれているので、それらを取り除いてそしてデータベースを再パックしなければなりません。再パックの前にそれら古いコミットへのポインタを持ついかなるものを取り除く必要があります。
$ rm -Rf .git/refs/original
$ rm -Rf .git/logs/
$ git gc
Counting objects: 19, done.
Delta compression using 2 threads.
Compressing objects: 100% (14/14), done.
Writing objects: 100% (19/19), done.
Total 19 (delta 3), reused 16 (delta 1)
どれくらいのスペースが節約されたかを見てみましょう。
$ git count-objects -v
count: 8
size: 2040
in-pack: 19
packs: 1
size-pack: 7
prune-packable: 0
garbage: 0
パックされたレポジトリのサイズは 7KBに下がりました。当初の 2MBよりもずっとよくなりました。サイズの値から大きなオブジェクトが未だ緩いオブジェクトの中にあることがわかります。そのため、それは無くなったわけではないのです。ですが、それはプッシュや後続するクローンで移送されることは決してありません。これは重要なことです。本当にそれを望んでいたのなら、git prune --expire
を実行することでオブジェクトを完全に取り除くことができました。